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エルミタージュ・ドゥ・タムラ [遠くの食卓(国内の飲食店)]

軽井沢旅行その4

軽井沢の中心部から少し車を走らせて森の中にずんずん入った所に
ある一軒家がエルミタージュ・ドゥ・タムラ。完全予約制のフレンチのお店。
駐車スペースはまだ道路沿いに有るけれど、そこから石畳を歩いて
お店にはいると、森に囲まれた中にサンルームの様な大きなガラス窓
で囲まれたテラス席がある。我々が案内されたのは大きな暖炉が
あるお部屋。暖炉も、置いてある調度も、絵も古い物のよう。
席に着くと手荷物を置く小さなイスがそっと置かれていた。
大きな荷物は車に置いてきたとは言え、女性はバックを持って
いるもの。そんな小さなバックを置く場所があるのは嬉しい。

この後 別の場所に移動しなくてはいけない日のランチだった
ので車で行ったのだけど、車で来るんじゃなかったとかなり後悔した。

まずは 食前酒でも飲みながら落ち着いてと言うことで飲み物の
メニューが差し出される。あぁ、ちょいとのどが渇いているから、
シャンパンやキールでものみながらなんていいのに。炭酸水で
作ったベリーニで我慢する。

さて、最初はサンマのテリーヌ。そろそろ秋になったなぁと感じ
つついただく。洋なしも乗っていて 白ワインが合いそうな皿。
次にやってきたのが冷たいボルシチ。グラスの中でサワークリーム
の様な白いソースとロワイヤルになっている。
エルミタージュ・ドゥ・タムラ.jpeg
へぇ、冷たいボルシチ?と思いつつスプーンですくってみると、
ソースの下のボルシチ部分はゼラチンで固められていてびっくり。
確かにビーツの味がして5ミリ角くらいに切った野菜がいろいろ
混ざっている。確かにボルシチの味だ。お隣の席で説明している
ときには、冷たく固めたボルシチですという説明をしながらサーブ
していたけれど、私は「固めた」部分が無かった分 びっくり
楽しめたなぁ。サワークリームの上にはオリーブオイルがちょっぴり
垂らさせていて、全体を混ぜながら食べると、本当に冷たいボルシチ。
スープではないけれど、いろんな野菜の歯ごたえが違って楽しい。

あおりいかのグリルも、昨日食べたクーカルでの小いかのプランチャ
を思わせる絶妙の火の入り具合。イカって本当に柔らかく美味しい
物なのだ。生ではない、火が通りすぎてもいない火の入れ方 
今回の旅行では本当にこの火の入れ方を考えさせられる。
あぁ、でもそんなことより、こんなに旨い皿にはワインが欲しいよ 
ホントに。

イカスミのソースの上にアルデンテのご飯、タマゴタケという
軽井沢周辺で採れるキノコと一緒に乗っていた。タマゴタケは
オレンジ色のプチトマトと同じような色のぽりぽりと下歯ごたえ
のキノコ。初めていただく。
ここのシェフ、田村さんはキノコ名人と一緒にこの近所の山に
キノコを採りに行かれるそう。土地の食材を大切につかっていらっしゃる。

冷たい桃のスープはここのスペシャリテ。桃の中をくりぬいて
凍らせた器に桃の中身を裏ごしした物に生クリーム・コンソメを
合わせて流し込んだ物。中の桃のスープは甘すぎず、さらりとした
味わいのスープ。桃の味と生クリームというともっとデザートっぽい
物を想像していたけれど、ちゃんとしたお食事。凍らせた桃に
接している部分はだんだん凍ってアイスクリームの様な堅さに
なってきていたのをしゃりしゃり削っていただく。桃部分も少し
削って シャクリ。しみじみ美味しいなぁと思う。

ぱりっと焼いたフォアグラにはうにとオクラの花びらが飾られて 
オクラのソースがかかっている。透明のソースに5ミリ角くらいの
オクラが入っているのだけど、まず縦に切って種を除いてから
切ってあるようで、オクラ特有の花のような形が見えない。
最初 ピーマンが散らばっているのかと思ったくらい。
それがすくってみるとちょっと粘りのあるソースにオクラの味が
して、こんな風にできるものかと興味深い。

デザートの前にチーズはいかがですかとチーズのプレートを
持ってきてくださる。
あぁ、ランチにもちゃんとチーズを出してくれるなんて 
グランメゾンだ。しかし今日はワインが無い。
チーズは食べたいが、チーズを食べるんだったらワインがないと。
あぁ、ほんっっとに今度は絶対車を置いてくるぞ。

デザートには4種類から選べるのだけど、黄金桃のコンポートを頼む。
このブログを読んでくれている実家の母から、以前私が書いた黄桃の
話を見て 黄金桃という桃を食べたよというメールが来ていたのを
思いだし、なにか縁があったような気がして。
よく考えたら食前酒のベリーニから始まって今日は桃づくしではないか。
デザートの桃は甘酸っぱく仕上がって、上に乗ったアイスと共に食事の〆にふさわしい一品。

これで〆だと思っていたらプティフールにリンゴのスープが出てきた。
姫リンゴを1周りほど大きくした位のリンゴがさっきの冷たい桃の
スープの様にの中をくりぬいて凍らせた器で運ばれてくる。
少々酸味の感じられるリンゴに中のスープはリンゴの蜜の味がする。
大きさと言い、やや酸味が強めの味と言いあまり見たことが無い。
市販されていないリンゴなのかしらとマダムにお伺いすると、
間引きリンゴだと言うこと。
リンゴは1本の枝に沢山なるけれど、全てを残していては美味しい
リンゴにならないので、途中で何度も間引く。その何度目かの間引き
リンゴ。今年はリンゴの受粉からずっとお手伝いしているのです、
と目をきらきらさせながら教えてくださるマダム。この近所の
リンゴ農家さんにお休みの度にシェフとマダムとお手伝いに
行っているそう。そんなご縁で間引いたリンゴが美味しい
お皿になって私のテーブルに乗る。嬉しい話だ。

このお店では、入って最初にご挨拶するときからマダムが 
細かいところにまでいろいろ気にかけて動いていらっしゃる。
にこにこと笑いながらテーブルの状態を確認し、食材の話などを
聞かせてくださったり 常連さんとおぼしき方々と会話をしたり、
テーブルの片付けを指示したり。本当に隅から隅まで気を
配ってらっしゃるののがよくわかる。グランメゾンにはマダムが
必要だと言うけれど、このお店はこのチャーミングはマダムが
目を光らせているとよくわかるのだ。表にはでてらっしゃらない
シェフが語りたい食材のこと、地場とのつながりと言ったことを
全てこのマダムが繋いでいる。
驚くべきは、床はテラコッタや石で作られているのだけれど、
マダムもホール係もほとんど足音を立てないこと。ゆったりとした
静かな空間にカツカツ、ガツガツといった足音は意外に邪魔になる。
外も中もがやがやとした東京の駅ビルでは気にならないことが、
鳥の声や風の音が聞こえそうなこの場所にあっては気になるのだ。
たった足音一つとは言えない。それぞれが作り上げる雰囲気が
全てできあがっていると言うことに感銘を覚える。

また軽井沢に来なくてはいけない。そして今度は車を置いて。
帰りに車まで送ってきて下さったマダム、「お別荘はこの近く
なのですか?」の問いには苦笑してしまった。
我が家の家計は殆ど食ってしまって 別荘になんて回すゆとりはございません。

<いただいたメニュー>
炭酸水のベリーニ
サンマのテリーヌ
冷たいボルシチ
あおりいかのグリル
冷たい桃のスープ
フォアグラのグリル オクラソース
帆立のグリル
鶏肉のカボチャロール
黄金桃のコンポート
エスプレッソ
リンゴのプティフール
ハーブティー

エルミタージュ・ドゥ・タムラ
北佐久郡軽井沢町長倉820-98
12:00-13:00 18:00-20:00 月火休み
完全予約制 近くに予約の必要ない無彩庵あり
http://www.ryoubi.jp/

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コメント 4

うさこ

一番気になったのはサンマのテリーヌです!けど、お料理とは関係ないと思ってた「音」も、影響するものなんだなっていうところにもなるほどと思いました。プロの仕事をたくさん見ると、いろんなことがわかってくるものですね。私も元気になったら、開拓しよーっと。
by うさこ (2008-09-15 11:25) 

幸福もん

>うさこさん
自分でもみょーな所に気が行ってしまうもんだと思います。
B級グルメも含めて、場の雰囲気そのものも食事の重要な
要因だと思っています。
ラーメン屋は賑やかな方が良いし、魚屋は威勢が良かったりとね。

by 幸福もん (2008-09-15 22:10) 

ryuji_s1

エルミタージュ・ドゥ・タムラ
素敵なレストラン

お料理
おいしそうですね
by ryuji_s1 (2008-09-20 13:35) 

幸福もん

>ryuji_s1さん
素敵で美味しいレストランでした。
オーナーさんが地元との繋がりの中で得たものを食べさせて
いただいているという感じもとっても良かったです。
by 幸福もん (2008-09-20 23:04) 

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