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ある選手の引退 [まつわらない話]

この時期になると、野球やサッカーで移籍や引退の話題が出る。
今年のサッカー選手の移籍で話題になったのは、ゴン中山の磐田からの
移籍だろう。中山は日本A代表のFWで日本がワールドカップで始めて
あげた得点を決めた選手。しかも、磐田一筋で来たのだからその移籍は
大きな話題だ。
しかし、彼以外にも多くの移籍がある。サッカーの場合、来期も契約を
結ばないという事を「戦力外」と言う。これはなかなか辛い言葉だ。
ただ、あるチームの構想には入っていないけれど、他のチームではその人
の力を切望しているという場合も多々ある。チームでその人が活かせるか
どうかは、それぞれのチームの戦い方や他の選手との競合など色々な側面
がある。戦力外=選手として終わりと言う事ではない。

日本代表で言えば、日韓ワールドカップの時には中村俊介が代表から外れた
と大きな話題になった。中村俊介と言えば、日本だけではなく海外でも
通用する選手だ。ただ、監督の戦術では合わなかったり、他に入れたい
選手がいたか、その時の彼の弱い部分がきになったのかで代表から外れた
のだ。そんな事もある。

戦力外などとなり、チームを離れていく選手を送るのは辛い。ある期間 
その走る姿を見て応援してきたのだ。もちろん、へたくそーっ!と叫んだ
事もある。このチームではなくなるけれど、次のチームで頑張っている姿を
見ることが出来るかもしれないし、もしかすると日本代表でその勇姿を
見る事が出来るかもしれない。そんな選手も沢山いる。

しかし、引退となるとまた事情は違う。特に今年は私が応援しているチーム
に9年間在籍した選手が引退するのだ。他のチームのことであれば、他の人
から見れば「そうか」で終わる事も、長く観てきたチームにいた選手では
一言では終わらせることが出来ない。

曽田雄志というその選手は、大卒ルーキーで入団し我がチーム一筋だった選手。
彼自身としては点取り屋のフォワードから守るディフェンスへとポジション
を変えるという変化。そしてチームとしては監督も何人も変わり、J2での
優勝と昇格やJ1での戦い、そして降格と色んな変化が訪れた。そんななか
ずっといてくれた選手だ。そして彼は 印象的なゴールシーンに登場するのだ。
今は行なっていないけれど、以前はJリーグではVゴール方式という勝敗決定
方式を採用していた。90分戦って勝敗が付かなかったら、最長15分ハーフの
延長戦を行なうのだけれど、得点が入った時点で終了というもの。
そのVゴールをJ1全てのチームの中で最後に決めたのが彼だ。
Vゴールはさよならホームランみたいな物でゴールが決まったその場で試合
が終了する。その歓喜は並みではない。彼はその中に身を置いた事があるのだ。

そして今期、彼は怪我から引退を決める。今期は試合に出ていなかったけれど、
ホーム最終戦にベンチ入りする。もちろん立派なリーグ戦の1つの試合だ。
勝敗がどうでも良い訳ではない。彼を試合に出す為には、リードをしなく
てはいけない。それも1点では不安だ。2点以上の差をつけてリードして
おきたい。しかも、交代要員を1人彼のためにとって置けるようにけが人が
出ないことも必要だ。
前半から2点を取る積極的な試合展開。点が入るたびに、これで彼を試合に
出せると喜ぶ。後半に1点返される。このまま崩れてしまえばもう彼を出す
事は出来ない。選手も、サポーターも彼を試合に出したいと強く、強く思って
いる。1点リードの後半40分過ぎに 最後の交代カードで彼が呼ばれる。
競技場に交代がコールされると競技場全てから大きな拍手が起こる。
何かを持って走り寄った選手はキャプテンマークを持っていた。
キャプテンマークが彼に引き継がれる。

しかし、出るだけではダメなのだ。何とかこのまま試合に勝たなければ。
これで追いつかれたりすれば彼は自分を責めかねない。このまま勝って
ほしい。その競技場内の大きな気持ちの中、彼は走り、ボールに触る。
その度に競技場が沸く。
アディショナルタイム(ロスタイム)は4分。彼がペナルティエリア内で
倒されてPKを獲得する。もう競技場内は大騒ぎだ。もちろん、蹴るのは彼だ。
彼の得点を期待する気持ちが高まる。しかし、そんな中でPKを蹴るのは
難しい。多くのプレッシャーがのしかかる。彼はボールを蹴ったが
ゴールキーパーに弾かれてしまう。ため息で競技場がうなる。
そんな中、線審からのアピールでゴールキーパーが先に動いたとしてやり直しに。
今度こそ、今度こそ、今度こそ!その気持ちの中 彼のボールはゴールに
吸い込まれる。今度こそ本当の歓喜。
曽田.jpeg
なんと劇的な得点だろう。なんと劇的な最後の試合だろう。彼は劇的な
シーンを多く刻み付けて ピッチを去る。試合が終わってからもしばらく
ピッチに立っていたのだけど。

プロスポーツ選手が活躍できる時期は短い。特にサッカー選手は短い。
プロスポーツを職業として選ぶと言う事はその短い期間にどれだけ情熱と
時間と意志をつぎ込めるかと言う事なのだ。もちろん、引退した後も
元プロの人生は続く。ただ、そんな中で私は彼らが見せてくれる輝きを
貰って 応援していく事しか出来ない。この応援は彼らに届いているのだろう。
多くの選手が通り過ぎていく中で、ひとつのチームを応援していく事で 
通り過ぎていった選手にも「まだここにあるよ」といえるようにチームを
存続させていきたいのだ。その小さな力のひとつでいたい。
彼らは、コーチや監督として戻ってきてくれるかもしれない。現にそうやって
戻ってきてくれている人もいる。もしかすると、戻ってこないかもしれない
けれど そこにあることで何かの機会に思い出し、いつかいくかもしれない
港のひとつとして 何かの支えになるかもしれない。そんな場所でいられる
ように 支えていこう。

長く見続けているから より近しく、より輝いて、そして引退の時にはより
悲しく感じるのだろう。
あなたたちの輝きを見せてくれて どうもありがとう。

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Bobby

サッカーに対する熱い想いが伝わってきました。
スポーツによってファンとサポーターがありますが
その違いは?
by Bobby (2009-12-01 10:59) 

涼

お久しぶりです。
忙しい時期でしたが少しずつ落ち着いてきました。

コンサドーレと言う名前が決定した時の
ニュースを今でも覚えています。
道産子の逆読みがベースと言う。
あれから、随分経ちましたが、
幸福もんさんのようなサポーターが
ついているのは選手にとっても
幸せですよね、きっと。

私も「熱い想い」が伝わっていました。

by 涼 (2009-12-01 21:28) 

miopapa

これまでのとは
 また違った感じの絵と
  書き込みの内容に感動です・・・・・

by miopapa (2009-12-01 21:48) 

幸福もん

>Bobbyさん
サポーターというのはJリーグが始まったときにそう読んだのです。
野球などの他のスポーツはファンと呼んでいます。
ただ、サポーターだと一緒に戦っているという感じがします。

>涼さん
お久しぶりです。お元気でしたか?
コンサは設立のための署名運動が行われているときに署名をし、
その時からのつきあいです。
いろんな時がありますが、貰っている楽しさの分だけどこかで
返したいと思っています。小さな力ではありますが。

>miopapaさん
この選手の引退について、記事を書きながらもまた泣いてしまいそう
でした。こんな時の挿絵って難しいのですよね。

by 幸福もん (2009-12-02 00:34) 

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